デンマークの農業は、歴史的にも技術革新の伝統があります。最近では、デンマーク最大手の農業企業2社がスタートアップ企業と手を組み、農家向けの最適化データを作成し、農業のグリーングリーントランジッションの推進と、デンマークの協同組合間でのデータ共有によって利益の実現を目指すことに成功しています。
デンマークでは農業分野で、2030年までに気候変動による影響（カーボンフットプリント）を半減させ、2050年には気候変動に左右されないカーボンニュートラル宣言をしています。このゴールに向けて、大規模な投資、イノベーション、バリューチェーン全体での協力が必要になります。そこで、デンマーク最大手の農業企業2社は、技術スタートアップ企業IQinAboxと協力し、農協の共同所有者に、持続可能性を高める主要生産や主要数値など測定可能な結果を与えるソリューションを作成しました。
持続可能なソリューション
食肉大手ダニッシュクラウン社と農業企業DLG社は、ダニッシュクラウン社の食肉処理場に豚を供給する協同組合員に、豚の日々の成長と飼料効率に関する動的データを連携して提供しています。
具体的には、屠畜場へ豚を搬入するたびに、豚の成長や飼料効率を確認することができます。飼料効率は、養豚業者の環境の効率化と経済性の両方に最も大きな影響を与えるため重要な要因です。
ダニッシュクラウン社では、静的な屠畜データの提供から、現在では、生産の最適化により多く活用できる動的な主要数値を組合企業に提供しています。ダイナミックデータの情報は、ダニッシュクラウン社内で生産と販売の最適化に利用されていますが、この新しいシステムで、会員企業は以前よりはるかに迅速に意思決定できるようになりました。例えば、豚の成長が悪くなっていないか、飼料効率が悪くなっていないかを細かくモニタリングすることで、「農場の生産経済とサステナビリティの両方に結果をもたらします。」とダニッシュクラウン社のオーナーシップディレクターであるニコライ・ノアガール氏は述べています。
DLG社の動物栄養担当ディレクターであるトローレス・ムレ・オルセン氏は、「2つの協同組合が連携することでオーナーの生産性を共同で向上できることを喜ばしく思う。」とコメントしています。
「私たちにとって重要なのは、顧客が今以上にデータ登録を増やすことなく、購入した飼料が生産や生産性に与える影響を継続的に把握できるようにすることです。私たちは協同組合として、とりわけ「オーナーや顧客の価値を提供するツールを創造し開発する」ことを世界に先駆けて開発してきました。このソリューションによって、農業が日々の農作業に活用できる貴重なデータを提供を目指します。」とトローレス・ムレ・オルセン氏はコメントし続けます。
「バリューチェーン全体でデータ共有に協力することで、農家にとって重要な2つの課題である、優れた生産経済性と気候効率性を実現する貴重なツールを生み出すことができます。もう少し長い目で見れば、サイロがいつ枯渇するかを予測できるようになるのと同じように、この取り組みで得られたデータによって、「成長期の豚に与える製品開発」を強化できると考えています。トローレス・ムレ・オルセン氏は次のように述べています。「必要な知識を得ることで、顧客の日常をより快適にすることができます。」
全体像の把握
このプロジェクトは、モデル開発と技術プラットフォームを担当したIQinAbox社とともに開発されました。取締役兼共同経営者であるトーマス・ニーサム氏は、使用可能なデータ量が増えることを喜んでいます。
「IQinAboxは、デンマークの農家が意思決定に利用できるデータ量を増やすために作られました。ダニッシュクラウン社とDLG社の両社が協力することで、農家の許可を得て、これまで2つに分かれていたデータを結びつけ、農家にとって重要な数字を作り出し、非常に具体的な価値を提供しています。」とトーマス・ニーサム氏は述べています。
協同組合員の飼料効率を週ごとに把握することで、個々の生産者だけでなく、企業にとっても最適化の機会が生まれ、その全体像がサステナビリティ目標の検証に役立っています。
ダニッシュクラウン社では、2018年から組合員の気候認証を開始しましたが、ここでは飼料効率が重要な数値の一つとなっていました。新しい機能により、オーナーの豚の飼料効率の発展について、より動的数値の概要を得ることができ、飼料効率が良くなり、気候フットプリントが小さくなるかを常に確認できるため、サステナビリティー目標の検証に役立ちます。」とニコライ・ノアガール氏は述べています。